建設業経理士資格は、受注産業である建設業界における特殊な会計処理の知識を向上させる目的を持っています。
一般的に物を売る企業では
- 仕入れた商品をそのまま売る
- 仕入れた材料を使って商品を作って売る
のどちらかが行われます。
いずれにしても、商品があることが前提です。
ところが、建設業の経理は、受注してから生産を開始することが多いです。
そこには特殊な会計処理があり、特殊な用語が使われています。
この記事では、知名度の高い簿記との違いを確認しながら建設業経理士の資格についてご紹介していきます。
これから、建設業界で経理として仕事をしたいと考えているなら、取得して損のない資格です。
さらに、建設業経理士2級以上の合格者は重宝されます。
30代・40代からの転職にも役に立つ資格、是非参考にしてください。
建設業経理士とは
建設業経理士は、建設業界における経理のスペシャリストです。
その知識は簿記に近く、建設業界の用語や生産方式に特化した簿記と言っても良いでしょう。
建設業界は、完成品を販売する業種と違い、受注生産であるがために特殊な用語が出てきます。また会計処理にも特殊な処理が多いのが特徴です。
経理の担当者には簿記+建設業界の知識が必要になります。
建設業経理士資格は、一般財団法人 建設業振興基金が実施する民間資格です。
1級~4級までの4段階に分かれており、1級が最も難易度が高いです。
1級と2級の資格保持者を建設業経理士
3級と4級の資格保持者を建設業経理事務士
と呼びます。
私は、現在建設業経理士2級の資格を目指して勉強中です。その難易度は簿記3級と2級の間くらいかなと感じています(簿記3級は合格しています)。
詳しくはこちらの記事でも紹介しているので参考にしてください。

建設業経理士と簿記は何が違う?
簿記2級の資格は持っていない私ですが、資格取得を目指して勉強はしていました。
簿記2級には商業簿記と工業簿記があり、工業簿記では一般的な製造業の会計処理を学びます。
建設業経理士2級の勉強をして感じたことは、工業簿記に似ているなということです。
似ているけど、大きく違っていたのは
- 勘定科目名
- 経費の考え方
- 収益を計上するタイミング
です。
勘定科目名
簿記の勉強をすると仕訳の練習は数多くやるので、勘定科目名は結構覚えているほうだと思います。
この科目名は初めて聞いたなと思ったのは、
- 完成工事高
- 完成工事原価
- 未成工事支出金
- 完成工事未収入金
- 工事未払金
- 未成工事受入金
です。
難しい単語は使われていないので、イメージはしやすいと思いますが、それぞれの科目名が似ているので混乱しやすく注意が必要です。
簿記に慣れている人は、例えば『完成工事原価』は『売上原価』、『工事未払金』は『買掛金』と置き換えて考えてみると、理解しやすいでしょう。
経費の考え方
建設業経理士では、簿記では労務費としてとらえていた
- 事務職員の給与や手当
- 退職給付引当金繰入額
- 法定福利費
が経費として扱われています。
一方で、簿記では経費だった外注費が、独立した『外注費』として扱われます。(金額が大きく重要度が高いため)
経費の考え方は、最初とても違和感がありました。
収益を計上するタイミング
建設業では、製造に時間のかかるものが多いため、収益を計上するタイミングが独特です。
特に、注目すべきは『工事進行基準』による収益の計上です。
例えば、3年間で9億円の工事を請け負ったとしましょう。
その工事原価を6億円と見積っていました。
今、当期に工事原価が2億円(3分の1)かかったとすると、
収益も請負金額(9億円)の3分の1(=3億円)を
計上することになります。
建設業経理士は何級を目指すべき?
建設業経理士資格を取得したいと思ったら、少なくとも2級以上は目指してください。
日商簿記でも、(私は3級までしか持っていませんが)2級を持っていれば会社でお金の話についていけると言われています。
建設業経理士2級は、簿記2級より少し難易度が低いと思いますが、少なくとも建設業経理士2級を持っていなければ、建設業の経理がわかるとは言いにくいレベルです。
建設業への転職の際、履歴書に書いてあって人事の目を引くのは2級からです。
理想は1級です。
理想の話だけなら、どの資格でも最上位が良いに決まってるわよね・・・。
建設業経理士は建設業に特化した簿記
結局のところ、建設業経理士は、建設業界に特化した簿記と言えます。
実際、簿記と被る問題も見受けられます。
正直なところ、建設業界で経理の仕事をしなければ、特に必要のない資格だと言っても過言ではありません。
一方、建設業界で働くのなら、簿記よりも建設業経理士の方が重宝されます。
これから先、建設業界で働いてみたいと考え履歴書に記載するならば、2級以上を目指して勉強を進めてみてください。